環境リスク制御工学研究室

本多 了
教授 Honda Ryo

下水×微生物=持続可能な社会
研究テーマ資源循環と感染症情報収集を担う次世代インフラ
研究分野環境微生物学,水処理プロセス工学,アジアの水環境

 

研究紹介

下水×微生物をキーワードとして「社会に価値を生み出す次世代インフラ」を目指した研究を行っています。
住宅地からオフィス街まで地下を縦横無尽に走る下水管は,都市の情報収集ネットワークです。下水中のウイルスや病原細菌を解析することで,地域の人々の感染症流行や健康状況を知ることが出来ます。そのために,最新の遺伝子配列解析技術(バイオインフォマティクス)や機械学習モデルを活用して,新型コロナウイルスなどの感染症の流行早期検知システムや,アジア開発途上国をフィールドとして感染症の実態把握や越境拡散に関する研究を行っています。
また,都市を流れる下水が集まる下水処理場は,下水中のさまざまな未利用資源を活用するための最終拠点です。下水を安全な水資源として再生するためには,ウイルスや微量汚染物質を除去することが必要です。また,下水中の窒素・リンなどの栄養塩を利用して,バイオ燃料やバイオプラスチック原料となるバイオマス資源を生産するプロセスの開発などを行っています。
研究室では,留学生を積極的に受け入れて多国籍な環境で国際的に活躍できる人材の育成に力を入れています。

研究対象

  • メンブレン・バイオリアクター
  • インドでの河川採水のようす
  • 下水中の新型コロナ遺伝子解析

メッセージ

宇宙旅行が身近になったら,どんな地球を見てみたいですか?――拡大する人類の欲求は地球温暖化など地球規模の環境問題をもたらし,地球上の資源を有効活用することが急務となっています。経済のグローバル化によって人と物の国際移動が活発になった一方で,感染症はあっという間に世界に広がるようになりました。研究室では,国境を超えた国際的感覚・世代を超えた長期的視野を大切にしています。次世代の人類に残すべき地球の姿を守るために必要な技術・システムに関心のある学生を待っています!

原 宏江
准教授 Hara Hiroe

”賢く縮む”社会の上下水道を支援
研究テーマHow clean is "clean"?
研究分野衛生工学,細胞を用いた毒性影響評価,ケモメトリクス

 

研究紹介

近年,私たちの生活から排出される様々な化学物質が,下水やその処理水中にごく低濃度で存在することがわかってきました。一方で,日本に暮らす私たちにとってにわかには信じがたいことですが,現在,世界の20を超える地域において,高度な処理を施した”下水”を飲用水源(の一部)として再利用しています。こうした下水飲用再利用は専ら深刻な水不足を抱える海外の都市域で行われていますが,けして我が国にも無縁な話ではありません。水の循環利用における安全・安心の確保は,世界共通の重要な課題となっています。
ところで,今日の衛生工学の技術を持ってすれば汚水から高度な純水を作り出すことが可能です.上述の下水再利用施設でも酸化処理,活性炭吸着,膜ろ過などの高度水処理技術が活躍します.しかし,高度な処理ほど多くのエネルギーとコストを投じる必要があります.対して,日頃私たちが飲んでいる水は純水ではありません.その水の来歴を反映して微量な無機・有機の成分が溶け込んでいます.では,下水を再利用する時に,どれほど”きれい”であればよいでしょうか?そもそも“きれい”な水とは何でしょうか?下水処理水に残留する化学物質をすべて調べ上げることは極めて困難です.私たちは,様々な新しい切り口で「包括的な水質評価手法」の開発に取り組んでいます.研究成果により,次世代や世界の人に安全・安心な水を届けたいと考えています.

研究対象

  • 水質モデルによる新たな健康リスク管理
  • ヒト細胞を用いた水の安全性評価
  • 下水の循環利用と課題

メッセージ

私は「環境問題」や「環境保護」が声高に叫ばれる時代に育ちました.マスメディアにも大いに感化され,華やかな都市活動や何気無い日常生活の裏で日々大量に排出されるゴミや汚水のことが気になって仕方なかったため,大学では環境工学に進みました.時代は変わりましたが,水や資源の重要性は変わっていません.こと,人口減少局面を迎えている我が国においては,限られたリソースで持続可能な発展を遂げるために,より賢く水や資源を使っていく必要があるでしょう.”賢く縮む”社会を環境工学の知識・技術で支援する人材が求められています.