石野 咲子 助教
Ishino Sakiko
研究紹介
人類はこの数百年で地球の大気を劇的に変えてきました。そしてその歴史の途中でさまざまな大気成分の観測技術を開発し、変化を認識できるようにしてきました。しかし、変化が起こる前の大気の正確なベースラインの状態はわかっていません。一部、二酸化炭素やメタンなどの長寿命ガスは、アイスコアと呼ばれる氷試料に閉じ込められた気泡から過去の濃度を直接測定することができます。しかし、オゾンやエアロゾルなどの短寿命成分は、アイスコアに沈着したあと消失や変質を受けてしまうため、直接測定することができず、非常に難しい課題となっています。
本研究室では、この人為的変化が起こる前の自然の大気組成と化学反応を理解することを目指して研究しています。一つ具体例を挙げると、オゾンが持つ三酸素同位体組成(Δ17O)という特殊な指標が、大気中や雪中での化学反応を通じてどの物質にどの程度乗り移り、最終的にアイスコアにどのような環境情報を記録するかを調べています。このような興味のもと、大気・雪中での化学成分・同位体指標の観測や、大気化学輸送モデルによるシミュレーション、さらに分析手法の開発などにも取り組みます。
研究対象
メッセージ
現在の地球大気は、強力な酸化的媒体です。酸素を有するオキシダント(オゾンやOHラジカルなど)が色々な物質と反応している実験場のようなものです。この化学反応が、汚染物質を大気から除去したり、地球を冷やすエアロゾル粒子の生成に関わっています。こうした化学反応ひとつひとつを大気中で直接検出することはできません。室内実験によって調べられた反応速度の情報を集結した数値モデルで各成分の濃度を推測し、実大気で観測されたその成分の濃度と比較することで、プロセスを理解する、というのが一般的な方法です。そこに「同位体指標」の情報も加えるのが本研究室の特徴です。