水工学研究室

由比 政年
教授 Yuhi Masatoshi

沿岸域に秘められた自然の謎を解き明かそう
研究テーマ海浜変形・沿岸波浪の未解明事象の探求と沿岸防災への適用
研究分野沿岸防災工学,海浜地形学

 

研究紹介

海と陸との接点である沿岸域は,世界中の多くの経済活動の中心であり,人々が日々の豊かな暮らしを営むための拠点でもあります.私たちは,海や砂浜から自然の恩恵を受ける一方で,津波・高潮・高波などの自然災害の脅威にもさらされてきました.また,過去に長い歴史を経て形作られた海浜の様子は,近年では人為的な開発や地球温暖化の影響を受けて,多くの場合マイナスの方向に変化しつつあります.現在・将来の沿岸域が抱える問題は複雑ですが,その対処にあたって基本となるのは,変化をもたらす物理現象のメカニズムについて,その本質を理解することです.自然が本来有している特徴や成り立ちのしくみを知ることで初めて,それぞれの地域が有する多様な自然特性に寄り添った利用・開発・共生への道を切り拓くことが可能となるからです.私たちの研究グループでは,沿岸砂州と呼ばれる大規模な海底地形の組織的変動,人為的な環境改変や地球温暖化の進展が海浜地形に及ぼす影響,海底地滑りによる津波の発生・発達などを対象に,まだ十分に解明されていない水理現象の特性・本質を解き明かすための研究を行っています.また,高潮・高波時の波の打ち上げや越波予測に関する実用モデルを構築して,波浪災害を低減することを目指した技術開発を進めています.

研究対象

  • 海底地形と波浪伝播の関係
  • 石川海岸の海底地形の長期変化
  • 1833年山形沖津波の再現数値シミュレーション

メッセージ

私たちが身近に目にする里海・里浜の様子は,とどまることなく常に変化し,嵐の時やその前後,春夏秋冬の季節,10年20年といった様々な時間スケールで変貌をとげています.美しい里海・里浜を後世へ伝えつつ沿岸域の災害を未然に防ぐには,波浪や砂浜に関した物理現象のメカニズムの本質を理解することがとても大切です.私たちの研究室では,現地フィールドの観察や理論・数値モデルの開発・活用を通じて,沿岸域に秘められた自然の謎を解き明かし,多様な海や砂浜の成り立ちを理解するための研究に取り組んでいます.併せて,現在・将来の沿岸域の課題に的確に対処し,人々の安全安心な暮らしと自然環境との共存共生の道を探っていきます.

楳田 真也
教授 Umeda Shinya

研究テーマ海や川の土砂と構造物の持続可能な維持管理
研究分野水工学,土砂動態学

 

研究紹介

海岸や河川には人々の安全や生活を守り,水や水辺空間を利用するために必要な社会基盤となる構造物があります.防波堤,堤防,ダム,港湾等の重要性の高い施設の多くは約50~100年間に発生する可能性のある強い台風や地震に耐えるよう設計され,洪水,波浪や津波により構造物に巨大な力が作用しても維持できるよう造られてきました.しかし,近年の気候変動下で増強する洪水や波浪により設計を超える力が発生したり,土砂からなる川や海の地形が徐々に変化することによる河床低下や海岸侵食の影響を受けたりして,構造物の被害が発生しています.流域の土砂は水とともに川から海へと運ばれ,水の流れや波の作用によって川原や砂浜などの水辺の地形は常に変化しています.土砂の流入出量のアンバランスによってダム貯水池や港には土砂が堆積し,構造物下流の河床低下や砂浜の侵食が世界各地で問題になっています.流域の自然環境を守るには,川や海の土砂と構造物を総合的観点から維持・管理していく必要があります.私たちの研究グループでは,砂れんから海岸・河川構造物や流域スケールの波・流れによる土砂の移動現象について研究し,水域構造物周辺の地形変化を適切に制御するための技術開発を目指しています.

研究対象

メッセージ

 

谷口 健司
教授 Taniguchi Kenji

水と社会へのまなざしが,新たな未来を拓く
研究テーマ水災害に強い社会の実現
研究分野河川工学,水文気象学

 

研究紹介

地球温暖化に伴う気候変化によって,極端な大雨のさらなる強化や台風の強大化などが懸念されています.将来,大規模な洪水によって堤防が破壊された場合,どのように氾濫が広がっていくのか,どのような被害が生じるのかを推定することは,水災害対策を検討する上で欠かせません.私たちの研究グループでは,コンピュータシミュレーションによって,将来の大雨や洪水時の河川流量,堤防が破壊された際の浸水深分布の推定を行っています.また,浸水発生時の経済損失や避難困難度の評価にも取り組んでいます.さらに,堤防破壊時の氾濫流のコントロール方法や,水災害リスクの高い地域から安全な地域への居住地移転による被害軽減効果,人口減少にともなって都市や地域構造に変化が生じた際の水災害リスクの変化など,都市計画的な視点から水災害研究を進めています.
長期的な予測や計画だけでなく,リアルタイムで洪水どのように備えるかを考え,いつ避難すべきかを決断するために役立つ降雨予測情報の生成や高精度化にも取り組んでいます.

研究対象

  • 複数河川の同時氾濫
  • 洪水氾濫による浸水
  • 台風の将来変化

メッセージ

洪水氾濫や土砂崩れによる災害は,自然現象によってもたらされるものです.一方で,私たちがどこに暮らしているかによって,災害に出会う可能性は変化します.気候変化によって大規模な洪水などが予測されているなか,水の挙動を理解するとともに,都市のあり方を考えることの重要性が高まっています.私たちのグループでは,自然科学的な水へのアプローチと,都市計画分野の研究者との密接な連携によって,水災害に強い地域づくりのための研究を進めています.水災害に強い地域の実現は,持続可能な社会の創造へとつながっていきます.水災害研究を軸として,新たな未来開拓を目指します.

二宮 順一
准教授 Ninomiya Junichi

数値実験と現地観測で描く精緻な台風
研究テーマ海岸工学,気象学
研究分野大気海洋の相互作用と沿岸災害の精緻な予測

 

研究紹介

大気と海洋は地球表面のおよそ7割を占める海面において、風と海水流動の運動量や気温と水温の熱を複雑な過程を経て相互作用しています。この相互作用は日本に毎年のように災害をもたらしている台風の強さや、大気と海洋の熱バランスを決めるのに重要な働きをしています。しかし、平均的な状態から外れた強風や暴波浪を伴う環境では観測も満足に行えないため、まだわかっていないことがたくさんあります。より正確に台風の予測ができれば、日本に台風が到達する前に確実な避難活動ができますし、防災施設も適切な規模で整備することができます。大気と海洋の間で生じている相互作用を正確に理解して、予測モデルを改良し、災害対策に役立てることが私たちの研究です。

研究対象

  • 数値モデルプログラム
  • 海洋波浪
  • 台風の衛星画像

メッセージ

私たちの研究室では、コンピュータシミュレーションを用いて台風の経路や強度、そして台風による災害を予測したり、大気や海洋の観測をしてより良い予測モデルの開発をしたりしています。堅そうに見えてその実態は、大気や海洋、波浪のシミュレーションで自分だけの仮想空間を楽しみながら社会に役立つ知見を生み出し、時には海や砂浜を満喫しながら現地観測で新たな知見の獲得を目指しています。海に関心のある学生をお待ちしています。