小林 俊一 准教授
Kobayashi Shun-ichi
研究紹介
大地震による液状化災害や豪雨による土砂災害など、地盤災害は世界中で起こっています。しかし天気予報のような精度で地震の規模、範囲や時期を予測することは今のところ困難です。また地盤調査には限界があるので斜面の地質や地層は表面のごく一部しか分かりません。もし詳細な情報が得られれば精緻な予測ができるようになるかもしれませんが、そのような情報は現実的には得られません。そのため、限定的な情報を活用して地盤や交通インフラの脆弱性を「そこそこの精度」で評価するためには、方法論そのものが研究の対象となります。私たちは力学や数理科学的手法に活用して数値解析手法そのものの開発を行っています。最近は計算機の中に仮想の都市空間や地域を構築し、都市の脆弱性や強靭化を検討するデジタルツインが注目されています。地盤災害のレジリエンス強化を目指して、地域の脆弱性を丸ごと解析する手法にも取り組んでいます。
研究対象
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ゼミの板書
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道路ネットワーク接続性を力学アナロジーで解く
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基礎構造物の支持力3次元シミュレーション
メッセージ
ドローンや人工衛星などを使えば、地盤表面の様子はずいぶんと正確にわかりますが、たった1メートルでも地下になると、その実態は土を剥いでみないとよく分かりません。地盤工学が対象とする地質や地層は分からないことだらけです。このように利用できる情報が限られている場合には、過度に正確性を求めるモデル化を行うよりも、多少のデータの不足によっても結果が大きく外れない手堅い予測手法が役に立つこともあります。方法論の開発も立派なモノづくりですし、プログラムのバグを1つ1つ潰していくのは、パズルを解くような面白さがあります。楽しみながら頭を鍛えましょう。
阪田 義隆 准教授
Sakata Yoshitaka
研究紹介
皆さんの足元,すなわち地下には資源・エネルギーが眠っています。例えば,生きるために欠かせない水は地下水として汲むことができます。地下水は地層のフィルターを通るため,通常良質ですが,都市域では人為的に汚染されていたり,過剰な揚水を続けると地盤沈下などの問題が発生します。また地下は温度が年間を通じて一定に保たれており,地上に比べ相対的に夏は冷たく冬は暖かい温度差を建物の暖冷房や道路の融雪などに使うことができます。こうした地中熱は再生可能エネルギーの一つとして積極的に利用することによって化石燃料の消費抑制や低炭素社会の実現,SDGs達成に貢献できると期待されています。こうした足元の地下にある身近な資源やエネルギーを積極的に活用することが求められる一方,過剰な利用によって枯渇や環境影響が生じないよう管理することが求められます。こうした利用と保全の両立には,日本各地の地下にある地質の分布や構造,地下水や熱の賦存や形態がどうなっているか,更にそれらが今後気候変動や都市化が進む中どのように変遷するかを明らかにすることが議論の土台となります。わたしたちは現場を担う地域の企業や国内外の大学等の研究機関と連携しながら,身近な地下にある地球の資源エネルギーの利用ポテンシャルの現在および将来についてローカルとグローバル,地球科学と地盤工学の双方の視点に基づき評価分析する研究に取り組んでいます。
研究対象
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熱応答試験の開発
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有効熱伝導率の分布
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地質分布の全国推定
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地中熱ヒートポンプ
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ヒートパイプ現場実験
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クリギング推定
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帯水層の流域モデル
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複雑な地下の数値再現
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礫質土の水みち
メッセージ
皆さんは地面の下にどのように土が積み重なり,水が流れ熱が蓄えられるか想像できますか?それらは何万年に渡る地球のヒストリーの結果であり見る場所や深さによって異なります。資源やエネルギーは適度であれば永続的に使えますが,過剰に使うと短い間にバランスを壊してしまいます。わたしたちの研究は自ら現場に赴き地域毎に複雑な地下を解明するフィールドスタディが基本です。このローカルな研究の積み重ねを普遍化しビックデータや機械学習など最先端の情報技術と組み合わせた新たな地盤工学を創出し,わが国ひいては世界の資源エネルギー評価を行うことが目標です。この大きな目標に向かって,ぜひ一緒に学び課題解決にとりくみましょう。
熊 曦 助教
Xi Xiong
研究紹介
なぜ土砂災害が発生するのでしょう?土砂災害の多くは、長雨や台風などによる集中豪雨がきっかけで発生しています。その理由は、土の持つ特殊な性質にあります。自然界に存在する土の多くは、土粒子や有機物などの固体と水分および空気を含んでおり、均質な材料に比べて複雑な挙動を示します。土に含まれる水分量が変わると、土の強度も変化します。土砂災害による被害を軽減するためには、土中の水分量変化による土の強度特性の変化を理解し、土の材料特性を適切にモデル化する必要があります。この材料モデルを組み込むことによって地盤安定性評価手法の高度化を図り、さまざまな地質の斜面に対して降雨による土砂災害の発生原因解明や災害予測を目指します。
研究対象
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降雨による斜面崩壊
メッセージ
近年は地球温暖化に伴う気候変動によって、集中豪雨などの極端気象の頻発が懸念されています。災害に強く快適な生活環境を実現・保全していくためには、社会基盤の整備や維持が不可欠です。この点で、地盤工学が果たす役割はますます重要になってきます。私たちの研究室はマクロ(地盤材料の室内実験)からマクロ(原位置試験、現場試験)の幅広い視点に立ち、最先端のコンピュータ技術を応用して、地盤の特性を調査しています。地盤工学分野の国際性を理解し、世界の研究者と交流し、連携を深めていく研究スタイルを重視しています。