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講演会「理系女性研究者として思うこと」開催されました

2023年03月06日

ダイバーシティに富んだ研究・教育環境の実現

ダイバーシティ(多様性)に富んだ環境・組織には,多様な視点や発想が生まれ,組織そのものが活性化すると考えられます.しかし,日本の高等教育機関における女性研究者の占める教員は,他の先進国に比べると低いのが現状です.

女性研究者が増え,活躍できる研究・教育組織にするにはどうしたら良いか,学生・事務職員・教員が,意識を共有し,知恵を絞ることが重要です.

講演会「理系女性研究者として思うことー地方国立大のモデルケース」

今回(2023年3月3日),地球社会基盤学類では,信州大学から山田桂先生をお招きし,自らの経験を通じて感じたことをお話しいただきましたのでご紹介します.

子育てとフィールドワーク,そして研究スタイルの変化

山田先生は,信州大学理学部理学科地球学コースの教授です.専門は,貝形虫という微小な節足動物の化石です.フィールドワーク(野外調査)があるなかで,二児の出産・育児をしながら研究・教育活動に邁進されてきました.助教から准教授,教授になるにつれて大学業務が増加するなかで,研究スタイルを変化させてきたといいます.学生時代には長期のフィールドワークを実施していたとのことでしたが,大学に就職し,昇進するとともに短期間でフィールドワークが完了するスタイルに変化させていきました.何週間もかけて野外を歩いて地層を調査するスタイルから,地上から地下を掘削してコア試料と呼ばれる直径10cm弱の長い円筒形に切り出した地層試料を実験室に持ち帰って,実験室で長い時間をかけて分析するスタイルに変化させたのです.

支援,一番大切なのは周りの理解

短期とはいえ,育児をしながら出張を伴うフィールドワークを実施するのは大変です.山田先生の場合は,子どもの世話を親が助けてくれたことでどうにかフィールドワークをこなすことができたそうです.また,大学において研究に従事できる時間も短くなる中で,大学からの支援で研究補助者を雇用できたことは,出産・育児および大学業務の増加で研究時間確保が難しかった状況において助かったようです.当時は大学から女性研究者への支援が今ほど充実していなかったのですが,大学への働きかけによって実現した支援も多かったようです.

また,このような金銭的な支援以上に,同僚達の理解に助けられたことを強調されていました.出産時の上司であった教授らは,出産・育児によって一時的に研究・教育時間が減ったとしても,女性が活躍できる職場であることの方が,長い目で見たときのメリットは大きいとして,出産・育児をコースとしてサポートすると後押ししてくれたそうです.

山田先生は,女性が研究・教育職で活躍するために必要な支援は,親の協力有無や研究スタイルなど,個々の事情で大きく異なり,その状況は刻々と変化していくと言います.そのときどきに必要な支援を,同僚や大学が気づかないケースが多々あるだろうから,女性研究者は,必要な支援を周囲に伝える必要があるし,まわりの教職員は,その必要支援の変化に気を配ることが大切であろうとお話しされました.

女子学生や若手女性研究者へのエール,そして皆が活躍できる組織へ

最近ではデジタルツールの発達で,職場に行かなくてもオンラインで研究・教育がある程度実施出来るようになってきたとともに,女性研究者支援策の充実で,ジェンダーによらず夢が叶う世の中になってきたといえます.だからこそ,夢をあきらめないで欲しい,と学生や若手教員にエールを送っておられました.

その上で,何を重視するかは,人によっても,そして人生のタイミングによっても違う.それを,自分も,まわりも,理解することが大事だと講演を締めくくられました.

感想

講演会後,山田先生の前向きな姿に刺激されたのか,会場からは多数の質問が飛び出しました.聴講していた学部4年の女子学生に感想を尋ねてみました.

「パワフルに子育てと仕事の両立をしていてスゴいと思いました.私は研究者にはならないかもしれませんが,ずっと働きたいと思っています.山田先生ほどのパワフルさを持っていない私がはたして両立できるのか心配な面もありますが,我慢しすぎずに周りに頼ることが,働きやすい環境の形成につながるのだと感じました.また,仕事と育児の両立が可能な環境が,制度としても社会としても整ってきていることも実感し,働き続けることへの希望が見いだせました」

ご講演,ありがとうございました.

謝辞

ご多忙の中で本公演をお引き受けいただいた山田先生には深く御礼申し上げます.

本講演は令和3年度に金沢大学が採択された事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(先端型)」の一環である「博士後期課程女子学生育成支援制度」によって実施されました.関係各位に御礼申し上げます.

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